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紙をめくって単語を調べるしかなかった昔から、時代は進歩した。一口に辞書といっても、書籍、電子ブック版、CD-ROM版、ネット上のフリー辞書、有料のオンデマンド版など、選択肢が広がった。その辺の事情について簡単に述べてみたい。
まず、辞書電子化の先駆けとなったのが10年程前から盛んに(日本)市場に出た電子ブックである。ここでいう電子ブックとはソフトとハードが一体となったトラベル辞書のようなものではなく、電子ブックリーダーという専用のハードを使い、電子ブックというソフトを入れ替えて使うものである。一部に専門辞書を含むタイトルが電子ブックになった時は、大きな感慨があった。今は電子ブックリーダーという商品は市場であまり見かけなくなった。新しい書籍の電子ブック化も歩留りのようである。電子ブックリーダーとしては読取専用機ではなく、読みたい本をダウンロードして読むPDAやモバイルPCに時代は向かっているように思われる。電子ブック(8cm CD-ROM)自体は相応のビューアーを使えばPCでも利用できるので、通常のCD-ROM版辞書と同様に使い続けられる。
電子ブックであれ、CD-ROM版であれ、一般にデジタル辞書のメリットは、単語を辞書で「引く」代わりに「検索する」ことの手軽さにある。ファイルのなかの単語をマークするだけで、ホットキーなどで即時に訳語を表示できるのは確かに快適である。頻繁に使う辞書は(著作権の許す限り)ハードディスクにコピーして使うと、CDを入れ替える手間が省ける。細かい操作はビューアーや検索ソフトの作りによっても異なるが、今までにない辞書の使い方が可能になる。例えば、一つの単語を複数の辞書で同時に検索できる。また、逆引機能を利用すれば、独和を和独辞書として使える。その他辞書によっては、全文検索、条件索引(分野、人名、地名、化学式などでの検索)、キーワード絞り込みなどの有用なオマケが付いていることも多い。音声機能も学習辞書として使うには便利である。
オンライン辞書はどうかというと、個人や企業のホームページの用語集からメンバー専用の辞書サイトまで千差万別である。ビジネス現場で作成される用語集には、出版時に内容が固定された辞書にはない時事性がある。貴重なリソースである。但し、出所の確かな裏付けがない場合は、多少の懐疑心をもって内容を吟味する注意も必要である。
番外になるが、究極の辞書は自作のものである。客先や分野ごとに用語集を整備したい。また、翻訳メモリーのTrados を使った翻訳などでは、顧客の方から辞書(MultiTerm)を指定してくることもある。顧客にとっても用語集の作成は、品質の安定につながる。
とはいえ入れ物が紙であろうが、電子媒体であろうが、最後に物をいうのは内容、デジタル風に言えばコンテンツである。様々な出版社の学習辞書のデジタル化が進むなかで痛感するのは、専門辞書のデシタル化の遅れである。本当に仕事に役に立つと思う辞書はペーパー版がほとんどである。したがって、翻訳者の日常にはまだまだ紙をめくる作業がつきまといそうである。
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